検察側の証人 感想

何が真実で、何がウソなのか。はたまた何が真実であってほしいのか。


そもそも真実は何のためにあるのか。


そんなテーマについて考えさせられたが、とにかく舞台として、演劇として、見応えがあって本当に面白かった。



実力派俳優の全力で、緻密で、生きた演技を間近で見られたこと。あの気迫と佇まい。鋭く響く声。張り詰める緊迫感に、こちらも息をのんだ。



巧みなセリフ術で陪審員(=観客)の心に入り込む成河さん、只ならぬオーラで会場の空気を支配する瀬奈じゅんさんらによって私達はその世界に没入し、魅了された。舞台上に一人一人の感情があって、それぞれが動き、また乱される様子が見えた。



確実にネタバレ厳禁ではあるが、何度観ても面白いだろうなぁと思う。セットや衣装のこだわりについても、目を凝らせば凝らすほどに興味深い。





-------------↓    以下ネタバレ ↓--------------





 裁判中ローマインが言った「夫が(私のことを愛していると、)本当にそう言ったのですか?」という台詞も、今思い返すと......







物語の終盤の終盤、


レナードの裏切りに対して、ローマインをはじめとする多くの人(私含む。)が怒り、失望した。


いや、裏切りとは言っても、それも私の勝手な期待に過ぎなかったのかもしれない。偏見に過ぎなかったのかもしれない。


「純粋で人好きな青年であってほしい。」「ローマインと幸せに暮らすのだろう。」


そんなハッピーエンドに向けた私達の想いを、アガサクリスティは皮肉さえも込めたように、そして爽快に鮮やかに、ひっくり返してくる。


私達の期待や偏見で出来上がったレナード・ポウルという好青年は、目の前で消えた。





うわ〜参った!これはやられた!でも最高に面白かった!!!





私達をタダでは帰さない。そんな想いも感じた気がする(笑)


その思惑通り、私は良質な舞台に充実感を感じつつも「あれはどうすべきだったのか?」「真実とは?」と考えずにはいられなくなった。





実際に私は毎日沢山の真実に触れ、そして沢山の偏見と先入観とともに暮らしている。


きっとこれからも私は沢山の人と作品と真実と嘘に出逢っていくのだろう。そうやって沢山のことに触れて、考えて、深みのある人間になれたらいい。






今は作品を発信することも容易ではない時代にある。一人でも多くの人にこの舞台「検察側の証人」が届きますように。無事千秋楽まで終えられますように。








p.s.他の方々のレポも読んでみてください。色々な考察があって、更に面白いと思います(^^)